こどもの近視進行を抑える目薬「マイオピン」
以前のブログで、こどもの近視抑制についてお話ししました。
ここでは、近視進行抑制治療のうち低濃度アトロピン点眼(マイオピン)を使用した治療についてご説明します。
当院でも6歳~12歳のお子さまを対象にマイオピン点眼治療を開始しましたのでぜひご参考にしてください(6歳未満で遺伝的に近視が心配される方はご相談ください)。
マイオピン治療の流れ
治療スケジュール
初回 検査+診察(保険診療) |
後日 マイオピン1本 |
↓ |
1か月後 検査診察+マイオピン3本 |
↓ |
3か月後 検査診察+マイオピン3本 |
↓ |
以後3か月ごとに繰り返します |
※初回はサイプレジンという点眼薬を使用した近視の検査となり、2時間程度かかります。また注意事項もありますので、ご予約は必ずお電話で、眼科診療時間内にお願いいたします。
※初回の検査で近視があること、目に病気がないことを確認します。マイオピンを用いた治療は自費診療となりますが、初回の検査+診察は保険診療となりますので医療保険の制度上、同日に自費診療であるマイオピンをお渡しすることができません。診察日から1週間以内にマイオピンを取りにいらしてください(代理の方で問題ありません)。
※2回目以降の検査は屈折力・角膜曲率半径・眼圧・視力を調べる検査を行います。
※2回目以降は自費診療となるため検査、診察日にマイオピンをお渡しすることが可能です。ただし目のトラブルなどで投薬の必要がある場合は保険診療に切り替わり、後日改めて処方させていただくことになります。
マイオピン治療の費用
マイオピン0.01 1本3500円 |
マイオピン0.025 1本4000円 |
検査診察 1回2200円 |
検査は屈折度数・角膜曲率半径・眼圧・視力の測定をします。
マイオピン治療の注意事項
※マイオピンは安全な点眼薬ですが、日本国内未承認点眼液のため保険適用外になります。マイオピン処方に関する検査や診察などはすべて自費診療になります。
※近視の進行を抑制して最終的な近視度数をなるべく軽くする目的の治療です。近視の進行は完全には止められないことをご理解ください。
※近視は年齢が低いほど進行のスピードが速いため、なるべく低年齢から開始すること、また少なくとも2年継続してしようすることが薦められます。
※点眼薬はまだ残っていても1ヶ月で新しい点眼瓶に切り替えてください。
以上がマイオピン治療の実際の流れとなります。
マイオピンの効果について
マイオピンとは?
アトロピン0.01%、0.025%を薬剤として製造したものが「マイオピン」です。マイオピンはGMP(医薬品製造管理および品質管理基準)準拠の工場で徹底した管理の下で製造されています。
アトロピンとは?
アトロピン硫酸塩水和物点眼液1%(略してアトロピン1%)は通常の眼科診療において検査や治療に用いられる点眼液です。アトロピンは副交感神経に作用して目の中の毛様体筋という遠近調節を司る筋肉を弛緩させる作用があるので、お子さんの調節力を麻痺させて本来の屈折力をはかる目的で検査前に使われます。また毛様体筋の動きを休めるのでブドウ膜炎の治療にも使われます。
アトロピンの近視進行に対する効果
数々の調査の結果、このアトロピン1%が近視の進行を遅らせることが判明しました。しかしアトロピン1%は、瞳孔が開き続けることでまぶしさや不快感、目の痛みが続くこと・手元を見る機能が低下し読み書きなどの作業に困難が生じ・アレルギー及び皮膚症状という副作用をもたらします。また治療中止後にリバウンドが生じかえって近視の進行を速めてしまうことから実用化には至りませんでした。
そこで近視の進行を抑える効果はそのままに、副作用の面でより安全性の高いアトロピン点眼薬の濃度の調査が行われました。
その結果、シンガポール国立眼科センター及びシンガポール眼科研究所で実施された臨床試験では100倍に希釈したアトロピン0.01%が副作用は極めて低く抑えるものの近視の進行を抑制する効果はほとんど変わらず、2年間の継続点眼で近視の進行を50~60%抑えることがわかりました。
香港でも40倍希釈のアトロピン0.025%を用いた同様の調査がなされ、効果と安全性が報告されました。
また日本でも7大学で調査がなされ、小児に対するアトロピン0.01%の有効性と安全性を認める報告がなされました。
マイオピンの副作用について
シンガポール国立眼科センターによりますと、マイオピン点眼0.01%・0.025%を2年間継続した後に明らかにされた事実は以下の通りです。
・アレルギー性結膜炎、皮膚炎の発生はごく稀である
・IOP(眼圧)に変化がない
・白内障を発生させない
・点眼終了後も遠近調整機能は失われず、瞳孔の拡張も一時的である
・電気生理学により、網膜の状態が不変である
朝方に光がまぶしく感じられることがありますが、その場合は点眼する時間を少し早めの時刻にずらすなどして改善できます。近くにピントを合わせる機能(調節機能)にはほとんど影響がないので、本を読んだり字を書いたりする作業に影響はありません。
以上、マイオピンを用いた近視進行抑制治療の具体的な流れと薬剤についての説明をしました。
よくわからないこと、もっと聞きたいことなどありましたらお気軽にご相談ください。
参考:https://www.myopine-eyelens.sg
記事監修:河口内科眼科クリニック副院長/眼科専門医 河口奈々恵 →医師紹介
〇江東区清澄白河駅から徒歩3分の河口内科眼科クリニックでは、健診、内科検診、内視鏡、眼科検診のご予約を随時受け付けています。生活習慣病、胃腸の病気、また鎮静剤使用で苦痛のない胃カメラ・大腸カメラの同日検査、また当日ポリープ切除が可能です。眼鏡処方、コンタクト、その他白内障や緑内障、糖尿病などの一般眼科はもちろん、小児眼科、低濃度アトロピン点眼による近視抑制治療も行っております。