スギ花粉症の舌下免疫療法
スギ花粉症でお悩みの方、舌下免疫療法という治療法をご存知でしょうか。
これは、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を少量ずつ摂取して体を慣らしていくという減感作療法(アレルゲン免疫療法)のひとつです。
スギ花粉症を完治できる?
現時点で、アレルゲン免疫療法はスギ花粉症を完治させる可能性のある唯一の治療法といわれています。
舌下免疫療法は、スギ花粉症アレルゲンであるスギ花粉エキスで作られた錠剤(シダキュア®︎)を1日1回舌下投与するという確立された治療法で、約8割の方に効果があり、うち約2割の方でスギ花粉症が完治する可能性があると言われています。また数年治療を継続することで、治療期間終了後もその効果は長年にわたり持続します。
スギ花粉症の舌下免疫療法の特徴
■アレルギー体質を根本的に変える
■約8割の方に効果が期待できる
■スギ花粉症が完治する可能性がある
舌下免疫療法の方法と注意点
スギ花粉症の舌下免疫療法の方法
■1日1回
■舌下錠を舌の下に1分間保持した後、飲みこむ
■舌下服用後5分はうがいや飲食をしない
■服用2時間前後は運動・飲酒・入浴をしない
スギ花粉症の舌下免疫療法の注意点
■スギ花粉症の確定診断が必要
舌下免疫療法を始める前に、本当にそのアレルゲン(スギ花粉)が症状の原因かどうかを調べる必要があります。血液検査でスギ花粉に対するIgE抗体の血中濃度を調べることでスギ花粉症の確定診断を行うことができます。
■スギ花粉のオフシーズン(6〜11月)に始める
この治療は花粉症のオフシーズン(6月〜11月)になってから開始します。スギ花粉症のシーズン中にこの治療を開始することはできません。すでにアレルゲンに大量に暴露されているため免疫が活性化しており、治療により強いアレルギー反応の副作用を誘発する可能性があるためです。
■数年間(推奨3年以上)毎日服用する
花粉症のオフシーズンから治療を開始し、早ければ次の花粉症シーズンに効果が出始めますが、しっかり効果を発揮させるためには3年以上の治療期間が推奨されています。
■少なくとも1ヶ月に1度は受診が必要
体調観察と処方のために定期通院が必要です。治療開始時は少なめの量(導入量)から開始し、重篤な副作用がないか1週間観察します。問題なければ1週間後に通常量(維持量)に増やして継続します。その後2週間、4週間と通院間隔をのばしますが、通常月1回の通院が必要となります。
■副作用としてアレルギー症状がでることがある
舌下免疫療法は「アレルギーの原因をあえて少量ずつ摂取する」治療法ですので、ひとによってはその少量のアレルゲン摂取でもアレルギー反応がでてしまうことがあります。口や喉の炎症、じんましんなどのほか、アナフィラキシーやショックなどの重篤な副作用が出現する可能性があり注意が必要です。そのため投与初回は医療機関内で服用し30分の経過観察を行います。重症の気管支喘息をお持ちの方は喘息発作を誘発する恐れがあるためこの治療はできません。
5歳以上から治療が可能
5歳以上のお子様から治療が可能ですが、お子様への治療にはご本人の理解と協力、保護者のしっかりとした管理が必要となります。
以上のことを十分理解され、毎日服用し定期的に通院できる方がこの治療法の適応となります。
舌下免疫療法のメカニズム
花粉症をはじめとした「即時型アレルギー」は、アレルゲンによって免疫細胞たちが刺激されヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症物質が産生されることで生じます。一般的なアレルギー治療薬はこの炎症物質の産生をブロックすることで効果を発揮しますが、なかなか完全にこの反応を抑えることはできません。一方、アレルゲン免疫療法はアレルゲンをあえて少量摂取することで他の免疫経路を刺激し、結果的にアレルギー反応を起こらなくさせます。そのメカニズムは完全にはわかっていませんが、制御性T細胞の誘導やTh1系免疫反応の誘導によるTh2系免疫反応の抑制、抗原特異的IgG4及びIgA抗体産生によるIgE抗体産生抑制などが機序として考えられています。
当院のアレルギー診療
河口内科眼科クリニックでは、花粉やダニ、ハウスダスト、動物、食物など各種アレルゲンに対するアレルギー検査(血清特異的IgE抗体定量検査)を行っています。また、スギ花粉症に対する舌下免疫療法(シダキュア®︎)やダニアレルギーに対する舌下免疫療法(ミティキュア®︎)にも対応しています。いずれも保険診療ですので、まずはお気軽にご相談ください。
参考:スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引き(改訂版). 日本アレルギー学会 2018年
記事監修:河口内科眼科クリニック院長 河口貴昭 →医師紹介
〇江東区清澄白河駅から徒歩3分の河口内科眼科クリニックでは、健診、内科検診、内視鏡、眼科検診のご予約を随時受け付けています。生活習慣病、胃腸の病気、また鎮静剤使用で苦痛のない胃カメラ・大腸カメラの同日検査、また当日ポリープ切除が可能です。眼鏡処方、コンタクト、その他白内障や緑内障、糖尿病などの一般眼科はもちろん、小児眼科、低濃度アトロピン点眼による近視抑制治療も行っております。