スギ花粉症の注射治療「ゾレア®︎」始めました!
スギ花粉症がひどい方、ゾレア®︎という注射薬があるのをご存知でしょうか。
抗IgE抗体製剤であるゾレア®︎(一般名:オマリズマブ)は、既存の治療では症状が十分おさまらない重症〜最重症の季節性アレルギー性鼻炎(スギ花粉症)の治療薬として2019年12月に保険承認を得られた新しい注射薬です(難治性の気管支喘息や慢性じんましんの治療にもすでに使用されています)。
ゾレア®︎のスギ花粉症への効果
このお薬を皮下注射することで、従来の内服薬や点鼻薬では治まらなかった鼻炎症状をしっかり抑えることができます。
ゾレア®︎の特徴
■世界初の抗IgE抗体製剤
従来の花粉症治療薬は抗ヒスタミン剤というアレルギーを抑える内服薬がメインでしたが、眠気などの副作用のため内服できない方も少なくありません。ゾレア®︎は抗IgE抗体製剤という今までにないメカニズムの新薬ですので、抗ヒスタミン剤に副作用がある方でも使用可能です。また舌下免疫療法がうまくいかなかった方にも使用することができます。
■既存の治療薬よりも高い効果が期待できる
ゾレア®︎の投与により今まで内服薬や点鼻薬で抑えきれなかったつらい症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)が改善され、倦怠感や日中の集中力低下、夜間の寝苦しさなども改善することが期待できます。
■1回の皮下注射で数週間効果が持続
抗体製剤のため1回の注射で数週間効果が持続し、1回の投与で1シーズン鼻炎症状がおさまる方もいらっしゃいます。
■スギ花粉症シーズン限定
症状が続く方は花粉症シーズン中に2〜4週間隔で来院していただき皮下注射を行います。
ゾレア®︎の適応
ゾレア®︎は効果の高い薬剤ですが、非常に薬価が高い薬剤でもあるため、治療を受けられる条件が厳しく設定されています。
■12歳以上
■体重が20kg以上150kg以下
■現在重症〜最重症のスギ花粉による鼻炎症状
■前シーズンも重症だった
■既存治療(内服薬+ステロイド点鼻)で効果不十分
■血液検査でスギ花粉アレルギー検査陽性(スギIgEがクラス3以上)
■血液検査で総IgE濃度が30〜1,500IU/mL
以上のすべてを満たす方でないとゾレア®︎による治療を受けることはできません。
*花粉症の「重症」とはくしゃみや鼻をかむ回数が1日11〜20回であったり鼻詰まりのため1日の大部分を口呼吸している状態、「最重症」とはそれ以上の状態のことを指します。
ゾレア®︎を受けるには
ゾレア®︎治療を受けるための一般的な流れをご紹介します。
<1回目受診>
・問診と診察:重症のスギ花粉症であることを確認
・アレルゲン免疫療法(舌下免疫治療薬シダキュア®︎)の説明
・抗IgE抗体製剤ゾレア®︎についての説明
・血液検査:血清スギIgEと総IgEの測定
・体重測定
・既存治療開始(抗アレルギー内服薬やステロイド点鼻を1週間以上)
<2回目受診>
・既存治療の効果を確認
・血清スギIgE陽性(クラス3以上)と総IgE値を確認
・総IgE値と体重からゾレア®︎の投与量
・間隔を算出
・薬剤費と自己負担額の算出
・ゾレア®︎治療を希望されるか意思確認
<3回目受診以降>
・ゾレア®︎を2〜4週毎に皮下注射(スギ花粉シーズン中)
*ゾレア®︎は体重と血清中総IgE濃度に基づき、1回の投与量(75〜600mg)と投与間隔(2〜4週)が決定されます。
ゾレア®︎の注意点
■高額である
一般に「抗体製剤」という種類の薬剤は、製造に非常に手間がかかるため高額です。ゾレア®︎の場合、薬剤費のみで1ヶ月あたり3割負担で約4,500円〜70,000円がかかります(2023年3月現在)。
例)体重50kgで総IgEが200IU /mLの場合、4週毎に300mg投与=薬剤費58,294円=3割負担で17,488円
自己負担額によっては高額療養費制度が適用となるケースがありますので、詳しくは加入されている健康保険の窓口(国民健康保険、健康保険組合など)にご相談ください。
■注射部位が腫れることがある
ゾレア®︎の主な副作用には、注射部位反応(注射した皮膚の赤み、腫れ、かゆみ、痛みなど)があります。
■薬に対するアレルギーをおこすことがある
全身のじんましんやアナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応が起こる可能性がゼロではないため、異常がみられた場合には速やかに医師に連絡してください。めまい、疲労感、失神、眠気があらわれることがあるため、自動車の運転や機械操作など危険物を扱う際には十分な注意が必要です。また、本来IgEは寄生虫感染を防ぐ働きがあるため、寄生虫感染の流行地域に渡航する場合には注意が必要です。 スギ花粉症の注射治療薬ゾレア®︎のメカニズムゾレア®︎は抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤というタイプの生物学的製剤です。抗体製剤とは、ある特定の標的分子にのみ結合しその標的をブロックする薬剤のため、一般の医薬品と比較して標的分子に関係のない有害反応は出にくいという特徴をもっています。ゾレア®︎の場合、スギ花粉などのアレルゲンの刺激によりBリンパ球から産生されたIgEと特異的に結合し、IgEがマスト細胞と結合できなくすることで、アレルギー反応の発生を抑えます。
河口内科眼科クリニックでは、スギ花粉症でお悩みの方にIgE検査からゾレア®︎の皮下注射治療まで一貫して行なっております。また花粉症のオフシーズンには舌下免疫療法についても対応いたしております。まずはお気軽にご相談ください。
記事監修:河口内科眼科クリニック院長 河口貴昭 →医師紹介
〇江東区清澄白河駅から徒歩3分の河口内科眼科クリニックでは、健診、内科検診、内視鏡、眼科検診のご予約を随時受け付けています。生活習慣病、胃腸の病気、また鎮静剤使用で苦痛のない胃カメラ・大腸カメラの同日検査、また当日ポリープ切除が可能です。眼鏡処方、コンタクト、その他白内障や緑内障、糖尿病などの一般眼科はもちろん、小児眼科、低濃度アトロピン点眼による近視抑制治療も行っております。