便潜血検査とは? 結果が陽性(+)になったら?
大腸がん検診や人間ドックなどでよく行われる便潜血検査。「検便」などとも呼ばれますね。
この便潜血検査、結果が陽性と出ても放置されていることが結構多いのですが、果たしてそれでいいのでしょうか?
便潜血検査とは?
便潜血とは「便に潜んでいる血液」、肉眼では見えない便中の出血のことを指します。
つまり便潜血検査は、便の中に含まれる微量の血液を検出する検査です。
大腸にがんがあるとその表面から血がにじみ出ていることが多いため、大腸がんがある可能性を調べるためにこの検査は用いられます。
英語ではFecal occult blood test(FOBT)といいます。
便潜血検査はどのくらいの血液量を検出できる?
現在の便潜血検査は「免疫法」という検出方法が一般的です。便潜血検査免疫法は、便中に含まれるヒトのヘモグロビン(血液の成分)を免疫学的手法により検出し、その濃度が一定の基準以上の場合に「陽性」と判定されます。
多くの検診では便中ヘモグロビン濃度が150ng/ml以上のときに「陽性」と判定しています。これがどのくらいの血液量か例えると、「満杯のお風呂の水に血液1滴を落とした」くらいのごくごく薄い濃度です。
そんなわずかな量の血液を検出できるなんてすごいですよね!
便潜血が陽性なら必ず大腸がんがあるのか?
もちろん、大腸がん以外でも出血することはあります。
例えば、便中ヘモグロビン濃度が250ng/ml以上だった場合、大腸がんである確率は2%程度といわれていますので、残りの98%の方は大腸がん以外の理由で出血しているということになります。
ただし、便潜血陽性の中には大腸がんの前段階である大腸腺腫からの出血であるケースもしばしばありますので、大腸腺腫のうちに内視鏡検査で発見して切除すれば大腸がんを予防することにつながります。
ちなみに便潜血検査免疫法はヒトの血液のみを検出し、動物の血液には反応しないので、食事の影響を受けません(直前にお肉やレバーを食べていても大丈夫です)。
なぜ便潜血検査が大切?
現在、大腸内視鏡技術の進歩により、大腸がんの前段階(大腸腺腫)や早期がんの段階で発見し完全切除することで大腸がんを予防・根治することが可能となっています。
ところが、日本の統計データ(*1)を見ると大腸がんが原因で亡くなっている方は年々増える一方です。なぜでしょうか。
大腸がんは早期発見が大切!
大腸がんで亡くなる方が増えている一番の理由は「早く見つけられていない」からです。
大腸がんはよほど進行しないかぎり自覚症状は出ません。
症状がでるほど大きく発育する頃にはリンパや血液を介して他の臓器へ転移しており、残念ながら根治が困難となります。
以前のブログ「40歳になったら大腸カメラでがん予防」でも、大腸がんの早期発見・早期治療には大腸内視鏡検査を受けることが非常に大切であることをお伝えしました。
とはいえ、大腸がん撲滅のために全国民が毎年大腸内視鏡検査を受ける、というのも現実的ではありません。検査の身体的負担やコスト、マンパワーの問題などがあるからです。
そこで大切なのが大腸がん検診で行われている便潜血検査によるスクリーニングです。
便潜血検査によるスクリーニングとは?
便に血が混ざる原因は大腸がんだけではなく様々な原因がありますが、とりあえず大勢の中から「便に血が混ざっている人」をふるい分けて、その人たちだけ大腸内視鏡検査をすれば効率がいいですよね。これをスクリーニング検査といいます。
安くて簡便な方法でスクリーニング検査を行い、大腸内視鏡検査が必要な方(=大腸がんの可能性がある方)を探し出すこと、これが大腸がん検診の便潜血検査の目的です。
便潜血検査で陽性と判定される方は全体の約5~7%、陽性反応がでた方に大腸がんが発見される確率は約2~3%と言われています。
そして、便潜血検査によるがん検診は、1年以内の大腸がん死亡率を60%減少させる結果につながることが報告されています(*2)。
便潜血が陽性だったら?
あなたが便潜血検査陽性となったら、次にやることはただひとつ。
大腸内視鏡検査をうける。
これしかありません。
便潜血検査は「集団の中から大腸内視鏡検査が必要な人を選び出す」ことが目的の検査だからです。
便潜血陽性なのに大腸検査は受けない、というのでは、そもそも便潜血検査を受けた意味が失われてしまいます。
便潜血が1回でも陽性だったら大腸内視鏡しないとダメ?
便潜血が陽性ということは、ほぼ確実に便に血が付いています。
2日とったうちの1回だけ陽性だったとしても、必ず大腸内視鏡検査を受けてください。
なぜ便潜血検査は2日やるのか?
便潜血検査にも欠点はあります。
そのひとつが「偽陰性」(大腸がんがあるのにたまたま陰性になる)があることです。
がんから必ず血がでているとも限りませんし、採便の際にたまたま血が付着していない部分をこすりとってしまう可能性もあるからです。
便潜血検査は1回だけでは検出感度が低いので、日を分けて2回の便を採取する「便潜血検査2日法」が大腸がん検診では一般的となっています。
便潜血検査は毎年やったほうがいい?
便潜血検査は100%の感度で大腸がんを検出できる検査ではありませんが、繰り返し検査を受け続けることで検査感度をあげることができます。
一般的な大腸がんは発生してから自覚症状がでるまでに数年かかるといわれていますので、毎年繰り返し検診を受けることで大腸がんを早く発見する率を高めることができます。
見た目に血がでていても便潜血検査は受けるべきか?
便潜血検査は「血はでているけれど目には見えていない」方を大腸内視鏡検査へと導くための検査です。見た目に便に血がでている場合に便潜血検査は必ず陽性になりますので意味がありません。
まず大腸内視鏡検査を受けてください。
なお、女性の方は月経血が便に付くと正確な判定ができませんので月経時期を避けて検査しましょう。
便潜血検査で大腸がんと診断できるか?
便潜血検査では出血の原因を調べることはできません。出血の原因を調べるには大腸内視鏡検査をはじめ画像検査が必須です。
特に大腸内視鏡検査は病変の観察だけでなく、生検(病変の組織を採取して病理診断を行う)や治療(ポリープ切除や止血処置など)も同時に可能なため非常に有用です。
痔だと思うので内視鏡は受けなくていい?
便潜血検査が陽性となっても、「痔からの出血が原因だと思うので内視鏡は必要ない」と思われている方が多くいらっしゃいますが、痔の出血と思い込んで放置していたら実は大腸がんもできていた、というケースも少なくありません。
痔や炎症性腸疾患などで普段から便に血が混ざっている方は、その奥に大腸がんが隠れていないか定期的に大腸内視鏡検査を受けるようにしましょう。
さいごに
大腸がんによって亡くなる方を減らすために、大腸がん検診はとても大切な事業です
江東区の場合、40歳以上の江東区民の方であれば年1回、500円で便潜血検査を受けることができます(住民税非課税者や生活保護の方は無料です)。
当院でも随時受付しておりますので、是非ご活用ください。
<出典>
記事監修:河口内科眼科クリニック院長/消化器病専門医 河口貴昭 →医師紹介
〇江東区清澄白河駅から徒歩3分の河口内科眼科クリニックでは、健診、内科検診、内視鏡、眼科検診のご予約を随時受け付けています。生活習慣病、胃腸の病気、また鎮静剤使用で苦痛のない胃カメラ・大腸カメラの同日検査、また当日ポリープ切除が可能です。眼鏡処方、コンタクト、その他白内障や緑内障、糖尿病などの一般眼科はもちろん、小児眼科、低濃度アトロピン点眼による近視抑制治療も行っております。