大腸がんとAI
近年、様々な分野で進化し続けている人工知能(AI)のテクノロジーですが、医療の世界も例外ではありません。とくに大腸内視鏡検査はAI技術開発が最も進んでいる医療分野のひとつといってもよいでしょう。
ではなぜ大腸内視鏡検査にAI技術が重要なのでしょうか。
大腸がんは早期発見が大切
現在、日本人男性の11人に1人、女性の13人に1人が人生で一度は大腸がんと診断されています。
大腸がんは進行してしまうと手術では取りきれなくなります。抗がん剤も全ての方に効果が認められるわけではありません。残念なことに、現在日本では大腸がんによって毎年約5万人の方が亡くなっています。あらゆるがんの中でも大腸がんは死亡者数の多いがんです(女性の第1位、男性の第3位)。
一方で、早期の大腸がんであれば、ほとんど内視鏡的治療や外科的手術で根治が可能です。
つまり、早く見つけて対処すれば将来大腸がんで亡くなることを防げるのです。
大腸がんのでき方
大腸がんのでき方にはいくつかパターンがあります。
1.腺腫という良性のポリープからのがん化
2.慢性炎症粘膜からのがん化
3.正常な粘膜から直接がんが発生
このうち、もっとも多いケースが腺腫の変異による大腸がんの発生です。
腺腫は健診などでもよく遭遇する良性のポリープですが、大きくなるほどがん化率が高くなり、直径5mm以下で1%未満、直径6~9mmで約3%、直径10mm以上で約30%にがん化がみられると報告されています。
ですので、5mm以上の腺腫を見つけたら予防的に切除したほうがよいとされています。
大腸ポリープの見つけ方
大腸ポリープは大腸内視鏡検査によって探します。
大腸内視鏡検査の最大のメリットは、見つけたらその場でポリープを切除できることにあります(大腸のバリウム検査やCT検査などではそうはいきません)。
しかし大腸の中で小さな腺腫を見つけるのは決して容易ではありません。
大腸は直径5〜7cm、長さ約1.5mの管状の臓器で、ひだや凹凸、急カーブの連続した構造をしているため死角がたくさんあります。また大腸には便のカスや腺腫以外のポリープ、様々な見た目の病変が存在します。そのため内視鏡施行医には観察中の見逃しを防ぐための強い集中力と動体視力、そして良性・悪性をその場で鑑別するための正確な判断力が要求されます。
例えるなら、長く険しい洞窟の中で、どこにあるかわからない(あるかどうかもわからない)小さなキノコを孤独に探していかなければならないのです。
内視鏡AIで大腸ポリープを検出
そこでAI(artificial intelligence:人工知能)の登場です。
AIは、過去の膨大な画像データを機械学習することで、画面上に映った腸管内の景色からポリープ病変を瞬時に検出し、さらにそれが腫瘍性病変であるかどうかまで判断することができます。この優れた病変検出能力と疾患鑑別能力を持つAIが内視鏡システムに実装されることにより、内視鏡検査中にリアルタイムで病変の検出と診断をサポートしてくれるようになったのです。
いわば、今まで独りで取り組んでいた洞窟探検に、物知りで眼がいい(そして疲れ知らずの)仲間が参加してくれているようなものです。
とはいえ、カメラに映っていないものについてはAIも認知できませんので、AIの病変検出能力と疾患鑑別能力を最大限に発揮するためには、これまで通り内視鏡観察をしっかり丁寧に行う必要があります。
河口内科眼科クリニックでは、富士フィルム社の開発した内視鏡画像診断支援AIである「CAD EYE™️」を大腸内視鏡検査に実装しています。今後このような画像AIシステムは様々な分野に応用・拡大していくと思われますので、ぜひ期待していきたいと思います。
記事監修:河口内科眼科クリニック院長/消化器内視鏡専門医 河口貴昭 →医師紹介
〇江東区清澄白河駅から徒歩3分の河口内科眼科クリニックでは、健診、内科検診、内視鏡、眼科検診のご予約を随時受け付けています。生活習慣病、胃腸の病気、また鎮静剤使用で苦痛のない胃カメラ・大腸カメラの同日検査、また当日ポリープ切除が可能です。眼鏡処方、コンタクト、その他白内障や緑内障、糖尿病などの一般眼科はもちろん、小児眼科、低濃度アトロピン点眼による近視抑制治療も行っております。